新しい事業を始めたくなったり、売却を検討し始めたり、自己使用の目的ができたりと、それまで住んでいた入居者に何の問題がなくても、立ち退きを要求せざるを得ない場合があります。
一般的には、オーナー側が、入居者側に立ち退き料という代償を支払うことで解決しますが、中には法外な金額を要求する入居者もいるようです。そういった事態を招かないよう、できるだけ円満に退去を促すにはどうすれば良いのでしょうか?
困ったな!
正当事由の割合について
オーナー都合で立ち退きを促すには、正当事由がなければ非常に難しい問題です。入居者というのは、借地借家法によって保護されているからです。そのため、立ち退きにともなう正当事由が必要になります。
たとえば、建物が劣化して壊さなければいけないことなどは正当事由になります。入居者の家賃滞納なども正当事由になりますが、支払いが再開してしまえば理由にはなりません。
立ち退きに至ってはオーナーの都合というのは仕方がないとしても、突然退去を求められてしまったら、誰でも戸惑ってしまうものです。賃貸であっても、入居者にとっては住み慣れた街と人並みがある場所が家なのです。どんなことがあっても、正直に誠心誠意お願いするのが一番の策と言えるでしょう。
余談ですが、立ち退きで多いトラブルのひとつに、オーナーと入居者の折り合いが悪い、入居者の素行が悪い、などがあります。古き良き時代の習慣とも言えるのですが、昔のオーナーは、不動産屋まかせであることが多かったようです。
ただ部屋を埋めて、稼働率を上げるということだけに着目し、どんな人なのか、自分(オーナー)と合うのかということは、考えてなかったように思います。入居する段階でどのような人に入ってもらいたいかということを意識し、オーナーが素直に良いと思えるような人を選ぶという感覚的な部分を重視するこは実は非常に大切です。
住み慣れた町なのに!
立ち退き交渉に時期は?
心理面からして突然の出来事に人は動揺してしまうので、まずは相手の状況を聞くことから始めましょう。現在仕事をしている人なのか、生活に余裕があるのかないのかという相手の状況を理解して、タイミングを計ることが大切です。
正当事由があり、立ち退きを交渉するには6ヶ月の猶予が必要です。それを踏まえ、まずは話し合いの場を設けましょう。その際に注意しておきたいことは、トラブルにならないように法的な根拠の用意をすること、議事録をつくっておくことは必須です。
立ち退きの補償は?
金銭面を含めて、誠意を持った対応が求められます。明確に項目があるわけではないので、曖昧な部分もありますが、次の住居に移るための負担を減らすことや、今動いたときに余分にかかるコストなどを、正確に算出して補償を決め、合わせてお気持ちとしていくらかを上乗せすると良いでしょう。オーナーの誠意の表れにもなります。
お金を払うことに納得がいかないと思う方ももちろんいますが、住む場所がなくなるという不安から嫌悪感を持ってしまうことは否めません。大きなトラブルとなる前に誠意ある対応を心がけることが望まれます。
トラブルになりやすいのが、入居者が個人ではなくビジネスとして使用していた場合です。時に法外な金額を要求されることがあります。名刺に記載していた住所や看板の変更などの費用がかかるという言い分です。
もちろん入居者側からすれば余分なコストになるわけですから、誠意を持った対応が求められます。その場合はひとつずつ見積もりを出し、妥当な金額を緻密に算出して提示しましょう。その業務を引き受けてしまうくらいの気持ちも大切です。要は突っ込みようがないくらいに準備することです。
なるほど!そうか?
入居者の落ち度があれば立ち退かせることはできるの?
入居者に落ち度があればもちろん立ち退いてもらうことはできますが、この場合は必ず法律に詳しい人に間に入ってもらいましょう。
たとえば家賃滞納があり、支払いの能力がなかったり、意思がなかったりすると、立ち退きの正当事由になります。しかし、入居者が変な恰好しているとか、周りの人が怖がっているとか、そういったケースは曖昧で正当事由としては成り立たないことが多いです。
弁護士にまかせられることは、暴言を吐いて子どもが怖がっているといった法的に突っ込める落ち度がある場合です。そうなれば弁護士費用はかかりますが、立ち退いてもらうことは出来るでしょう。裁判になれば、お金がかかります。損害賠償などの請求はできても、相手に支払い能力がなければ期待はできません。
裁判にならないように解決できるのが一番なので、立ち退きをするオーナーは何にお金がかかるかということを、しっかり調べあげてから交渉するという準備を入念にしてください。
まとめ
立ち退きは決して気持ちの良いものではありません。どんな理由があるにしてもまずは誠心誠意、入居者と向き合うこと大切です。
結局は人と人との対話です。言い方や態度で状況は180度変わる場合もあります。どんなときも人として、卑劣な行動にならないように、相手の立場や思いを尊重しながら話を進めていきましょう。
賃貸マンションの経営となると、このケースでなくても様々な問題が浮上します。その際専門のアドバイザーがいることは非常に心強いです。なんでも相談できる弁護士など法に詳しい人との関係を構築しておくと良いですね。