マンションに入居したことがある方の多くは管理費を支払ったことがあると思います。
ではマンションを管理することにはどんなことが含まれているのでしょうか?
実はマンション管理業務に関し、日本は欧米諸国とは大きく違いがあります。しかしその違いについて疑問に思わないオーナーさんは多いものです。
日本では一般的であるがゆえ仕方がないのかもしれませんが、それゆえ建物自体の劣化を早めるとするならどうですか?マンション管理というその内容を一度見直してみませんか?
欧米諸国と違う日本の管理会社システム
日本の管理会社は、だいたい家賃の5%で賃貸管理を受けます。
主な業務内容は、
・入居者の募集や契約手続き
・家賃の集金や送金業務
・入退去時の専有部分(建物室内)のリフォーム
などです。
実は建物自体を維持するために必要な掃除や法定点検、共有部分の電球交換などは業務に含まれていません。
これら業務外とされている内容は、建物を資産価値として長く維持するために必要なことですが、オプションとなるため、つけないオーナーさんが多いようです。
その点、欧米諸国(アメリカ、イギリス、ニュージーランドなど)の管理会社というとアセットマネジメント(資産管理)という考えが根付いています。
アセットマネジメントとはいかにして家賃収入を上げられるか、そのためにはどうすればいいのかを考え、管理に務めます。
このとき、オーナーと管理会社、両者の思いは収益を上げるということに一点集中しています。
そう思うと決められた管理をして決まったパーセンテージをもらうという日本の管理システムは、考えのない資産管理であるとさえ思ってしまいます。
マンションの劣化は資産価値の低下を意味する
日本の管理会社がオプションとしている建物自体の管理(掃除・点検など)は、建物として維持するためには非常に大切な作業です。
建物に限らず有形のモノは経年劣化しますが、かならずしも平等に劣化するわけではありません。日々のメンテナンスにより劣化の速度を緩めることは可能なのです。
外観が汚ければ入居者を募っても敬遠されますし、共用部分の不具合(たとえば廊下の電気切れや雨漏りなど)をそのままにしておけば、入居者の満足度は下がり、退去のきっかけになり、空室率を上げてしまう結果になります。
それらの要素が積もり積もって、マンションの劣化=資産価値の低下につながります。
マンションをいつまでも魅力ある建物にするためには、そういったオプションを大切にすることです。
そして最も大切なのは、管理会社に経営者意識を持ってもらい、力を合わせて収益を上げていくことです。
もし収益が上がれば対価を支払うことでウィンウィンの関係となり、新たなモチベーションが生まれ、建物の価値も上がり、うまく回っていくのではないでしょうか。
今後人口が減少し、マンションの需要が減ると競争価格に陥るかもしれません。そんなときには唯一無二の価値を築いているなら、熾烈な競争に巻き込まれることはありません。
魅力あるマンションは、資産価値の高い建物です。
一時の支出だけを見ず、長いスパンで資産価値を形成する意識が大切です。
こうなると入居者が入らなくなるね!
部位ごとに違う建物の寿命
建物の寿命は部位ごとに違うため、たとえば30年維持させるつもりでマンションを建てるのであれば、修繕や点検などで余計な労力を使う必要もなく、税金対策にもなり、計画的なマンション経営が可能です。
鉄部の塗装
早いと6年程度でサビや塗装のハゲが発生。早い話、鉄は使わない、メンテナンスのかかる素材は使わないこともひとつの方法です。
屋上の防水仕上げ
防水のメーカー保証は一般的に10年。水漏れ防止の点検は10~15年スパン。
保証書を保管しておきましょう。メーカーと建築会社、施工店の連名であることが必須です。
ドイツ製の防水加工で50年保証というものがありますが、こういった長いスパンで利用するのもお勧めですが、初期費用が高いのが難点です。
外壁のクラック(ひび割れ)
壁のヒビよりも怖いのは、割れた部分から水が入ることで破裂するおそれがあることです。
ヒビ割れ部分にシーリング材などを注入する方法があります。ドイツ製のもので良いものがありますが、注入材によって強度を増してくれるというものです。
こういった日々のメンテナンスはもちろんのことですが、予めこういった劣化を予測して建物計画をすることは資産を守るためには有効な方法であり、これがアセットマネジメントの在り方です。
大規模修繕も必要です
建物が劣化する原因
建物の劣化には原因がありますが、一般的には経年劣化をベースに考えることが基本です。劣化が進み、目で確認することができる状態となると劣化がかなり進んでいると考えて良いでしょう。
・屋上と外壁
天候の変化を受けやすい
・軒裏
上面のコンクリートのひび割れから入った漏水が原因
・バルコニー床
ひび割れを放置したことが原因
・シーリング
一般的な寿命が12年。それ以降は乾燥しひび割れを起こす
・電気設備
一般的には15~20年の周期で交換が必要
・給排水設備
実際に使用しないと分かりづらい場所のため、入退去のたびに確認する
劣化を止めることは出来ませんが、遅らせることは出来ます。
定期的な点検を予定に刷り込むこと、チェック項目をまとめておくなど(以下参考に)準備しておきましょう。
①建築(基礎、外壁、バルコニー、廊下など)
②屋外設備(電気、給水、排水など)
③屋内設備(給水、排水、電機など)
④ピットな内設備(ごみ置き場、自転車置き場など)
中には相当老朽化している建物もあると思いますが、注視したいのは昭和56年以前の木造アパートです。
その年に建築基準法が厳しく改正されたため、それ以前の建物は現行の基準を満たしておらず、耐震的に弱くなっているからです。
その他、目視で判断できる特徴もあり、日ごろからの点検が危険を回避すると考えられます。
いろいろある補助制度
建物は日々のメンテナンスが重要ですが、費用はかさむものですね。耐震診断や耐震改修などにおける補助制度があります。
・耐震化補助制度(避難道路に指定されている道路に面している建物など)
・木造住宅耐震改修設計
・木造住宅耐震改修工事 (以上、大阪市の場合)
大阪市には子育て世帯向けに民間賃貸住宅改修促進事業というものがあり、リフォーム対象住戸(40㎡以上)1戸あたり最大75万円の補助があります。(詳細、要件あり)
こういう制度はあまり公にされていないのが現状です。自身でしっかりと調べて利用しましょう。
耐震工事は必要です。
修繕でできる賃貸経営の裏技
単刀直入に言うと、減価償却を起こすという方法で、借金を持っている間はできるだけ節税を少なくし、利用できる制度や経費で落ちる修理などをやっておくことです。
その資金はどうすれば良いのかですが、可能であるならば会社を興し、10年満期の保険に入ると良いでしょう。これは毎月の節税にもなります。
裏技のポイントは、修理改良が経費か否かとなります。減価償却での修理回収なのかで判定が変わります。簡単にいえば価値が上がるか上がらないかと言えるでしょうか。
価値が上がると税金を払わなくてはいけなくなります。おかしな話ですが、価値が上がらないようにしたいものですね。
まとめ
建物は大切な資産です。それを生かせるのは日々のメンテナンスが左右すると言えるでしょう。
マンションをスラム化させないために、自分自身で守ることはもちろん、管理体制やメンテナンスなど、業務の在り方を問い直す姿勢も必要ですね。
大きな建物であればあるほど費用も大きくなり、資金調達にも頭を悩ませるかもしれませんが、様々な公的な制度を上手に活用することで解消できます。
安定収入、かつ資産価値の高い建物を維持していきましょう。