消費税が増税されるということで、何か対策を立てなくてはいけないと思っているオーナーさんは多いのではないでしょうか。
実際に増税するとなれば「かなり節約する」という意識を持つ人が、あるアンケートによると40%以上をしめています。過去の消費税増税時の景気変動や世界の例を見ても、増税後は家計の実質的な所得水準が低下することから消費行動が抑制される傾向にあります。
つまり家計消費支出がかなり抑えられる傾向に向かっていき、固定費である家賃にも節約の影響は現れていくことは間違いありません。そうなっていけば、家賃相場が下がっていくということは十分に考えられます。そう言った状況の中で、経営者たちは様々な対策を行うことが必要になっていきます。
日本経済はどうなる?
日本経済は不景気のスパイラル状態にあると言えます。
実際に消費税が増税されることで消費が下がり、日本の税収は下がり続けています。そのため国債の発行額は増加し続けています。こうして国債が危うくなり、アメリカの金利も上がってきた…そうなればきっと日本の金利も国債を維持する為に上がっていくでしょう。このように日本の経済はギリギリの状態にあり、いつはじけてもおかしくない状態なのです。
実際に日本の地銀と呼ばれる銀行は、その収入の多くを海外に求めています。
もしも銀行がダメになったら、銀行が発行している貨幣の価値は暴落します。そう考えれば、土地や建物を持っているオーナーさんたちは、ある種安心かもしれません。
もしも、このように危うい状態の日本の銀行でマンション建築のためのローンを組み、金利変動の契約をしている人がいたら、今後の日本経済の変化に影響を受けないように、固定金利の契約にすることをお勧めします。
さらに2020年に東京での開催が決定したオリンピック。オリンピックに向けて、これから東京にはたくさんの建物が建つでしょう。そして、その後は大阪にも同じように建築ラッシュがくると思います。しかし、オリンピック後にはこれまでの歴史を見ても、開催後の成長率は落ち込みます。実際に50年前の東京オリンピック後も成長率は落ち込みました。
つまり、消費税増税とオリンピックの影響を受ければ、深刻な不景気を迎える可能性は少なくありません。そうなれば、家賃相場が下がることはもはや避けられない事実です。
消費税増税のアパート経営への影響はある?
では、消費税の課税対象になるのは
- 管理維持費
- 電気代等のランニングコスト
- リフォームなどの修繕費
- 設備投資費
- 大規模修繕費
- 建替え費用
非課税対象なのは
- 土地の購入費
です。
つまり、建物部分は課税対象、土台である土地は非課税対象だということです。
消費税は家賃にはかからないため、その部分には影響はありません。しかし、管理をするための費用は確実に消費税分アップします。電気代やガス代も上がります。そのため、管理費は上がります。
増税前に建築&修繕をやった方がよい!?
世間では増税前に!ということで「駆け込み需要」が増えると考えられます。その流れに乗って、では自分も!と考えてしまっているのであれば、ちょっと待ってみてはどうでしょうか?
実際に駆け込み需要が増えても、業者や資材には限りがあります。そのため建築資材の高騰や建築費の高騰など、需要過多による品質の低下など、様々なリスクも発生します。
そういったリスクもまずは頭の片隅に留めて欲しいと考えます。
また、消費税は経過措置が適用されるので
建築の場合は
・2019年3月31日までに請負契約締結
であれば
・2019年10月1日以降の引き渡しでも消費税8%のままです。
また、大規模修繕工事の場合は
・2019年4月1日までの契約
・2019年10月1日までに引き渡し完了
であれば消費税はやはり8%が適用されます。
そのため、増税するからと焦ってじっくりと計画を立てることもなく建築やリフォームを実行するのではなく、しっかりとした計画を立てて実行することが大切だということです。
消費税増税により家賃収入は上がる?
それでは、マンション経営にかかる費用を見ていきましょう。
課税対象となるのは
- 管理維持費
- 電気代等のランニングコスト
- リフォームなどの修繕費
- 設備投資
- 大規模修繕
- 建替え
非課税対象は
- 住居用の家賃
- 管理費
- 共益費
- 敷金
- 礼金
景気の悪化による家賃の低下を考えても、消費税増税によって、支出は増えるのに、収入は減っていくというのは、もはや避けられない事実なのです。その消費税分は減価償却され、償却資産が増えるということになります。
消費税増税によって、支出は増えるのに、収入は減っていくの?
年収が少ないほど税負担率は大きくなる
消費税が増税されると、年収が高い人ほど影響を受けるのではないかと思われがちですが、実は違います。しかし、消費税は高収入の人もそうではない人にも同じようにかかってきます。
そのため、実は年収が少ないほど税負担率が大きくなり、年収1,000万円以上の世帯よりも三百万円未満の低所得者の方が税負担率は高いのです。もちろん総額ということであれば、消費額が大きい世帯の方が大きくなりますが、負担率で考えれば世帯収入が少ないほど割合が大きくなります。
総住宅数が世帯数を上回る
マンション経営をするのであれば、このことは忘れてはいけません。
現在、賃貸住宅は429万戸が空き家です。それにプラスして長期的に誰も住んでいなかったり、取り壊し予定になっている住居は318万戸もあるのに、今は空き家法ができて、居住者がいない場合は固定資産税も下がりません。これは大きな問題です。
他にも売却用が31万戸、二次的住宅が41万戸、建築中で仕上げ工事をしている住宅が9万戸。
この数字からわかるように、人が住んでいないマンションはすごくたくさんあるのです。
それなのに、空き家になったら税金を取られるような制度になっている県もあるのです。空き家になれば家賃収入もなくなるのに、税金は取られてしまう。負のスパイラルですよね。
空家率30%超の時代はすぐそこ
ある予想では2033年にはなんと空き家率が30%を突破するのではないかと言われています。
現在の空き家率は16〜7%ですからたった15年後ほどでおよそ倍です。さらに、新築の人気は高いでしょうから、現在既に空き家になっている物件は、今後さらに空き家の可能性が高くなっていくと考えられます。
つまり、今後は消費税が増税するからどうしよう?という発想ではなく、人口が減り、空き家率が上がるから、では消費税をどのように使っていこうか?という風に発想転換をすることが大切になってきます。
こういったことを総合して考えると、消費税アップにより家計が苦しくなった場合、低所得者から引っ越しを考える可能性が高くなることはまちがいないでしょう。
その結果、物件によってはさらに空き家リスクが高まっていくことが考えられます。
つまり、入居してくれた人が出ていきたくないようなマンション管理・運営をするなど、管理運営費がかからないマンション経営をすることが大切になってきます。
マンション経営のコツは「収入」を増やすのではなく「手取り」を増やすこと。どんなに収入が増えても、税金が増えたのでは意味がありません。「税引き後の利益を増やすんだ」ということを念頭において組み立てることが大切です。
増税に負けない賃貸経営の考え方
大家さんの永遠の悩みといえば、
- これから空き部屋がどんどん増えるのではないか?
- 金利も上がっていくのでは?
- 家賃も下がりつづけるのでは?
- でも、相談できる相手がいない。
- 業者は自社の都合ばかり・・・「家賃下げて下さい!!」と言ってくる
このようなことに尽きるのではないでしょうか?
このような悩みに対して一つ言えるのは、経営というのは常に一寸先は闇だということ。でも、だからこそ、5年先、10年先を見据えて今の自分を見つめていかなくてはいけないのです。
人口が減り、世帯数が減るのは既に確定した未来の事実です。つまり、上記の悩みの多くは、受け入れたくなくても未来の確実な現実なのです。
消費税に関しても10%以上は上がらないんじゃないかと淡い期待をお持ちの方はいらっしゃいませんか?でも、冷静に現状を紐解けば、もっと上がるのではないかと考えるのが現実的だと思いませんか?ヨーロッパでは25%〜30%。そんな国はいくらでもあるのです。
日本の国債を見ても、これを減らすためには消費税の増税は不可欠でしょう。世界経済や日本経済の動きを見ながら、消費税のさらなる増税なども見越して事業計画を立てていくことが大切になるのではないでしょうか?
まずは、未来の現実を受け入れること。
そうすれば、未来に向けてたくさんの予想を立てながら計画していくことはできるのです。
これまでの賃貸経営の常識であった
- いい建物を建てれば安定経営ができる。
- いい不動産会社に管理させれば満室になる。
- 家賃保証があれば安定経営ができる。
- 家賃を下げれば入居は決まる。
- お金をかけてリフォームをすれば入居が決まる。
これは全て嘘です。もはや、そんな時代ではないのです。
まずは、そのことを含めた現実を受け止めてほしいのです。その上で、1000万あった収入を1100万にするにはどうしたらいいのかを考えてほしいです。
消費税が上がったら、家賃が下がることは間違いありません。
でも、だからと言ってどんどん家賃を下げて安売り家賃を設定することは、結果として経営に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。そこで、まずは物件に対する適正家賃を徹底的に意識し、そこに近付けるためにはどうしたらいいかを、とことん考えることを大切にして欲しいと考えます。
安売り家賃で100%の入居率になった時の収入と、適正家賃やターゲット家賃で80%の入居率になった時の収入はほぼ変わりません。そうであれば、どちらの方が自分にとってゆとりのある生活ができるでしょうか?
私は入居率をやみくもにあげるために家賃をどんどん下げるよりも、入居者のターゲットを明確にし、その人たちに向けたサービスをすることで物件の独自性を打ち出すことが、より良い賃貸経営への道のりではないかと考えています。
消費税が2%上がるから…と慌ててやみくもにリフォームするよりも、どんな人に入居して欲しいか?その人たちのためにどうしたら喜んでもらえるかをしっかり考えて動いた方が、結局は損をしないのではないかと思います。
現実を見つめ、その中で見えてきた未来を見つめることで、これからの新しいノウハウが出来上がっていくのではないでしょうか。
機会損失をなくそう
マンションを建てる時、リフォームする時、まずはこの「機会損失(空室)をなくそう」という点に着目して欲しいと考えます。
そして、税金をできるだけ払わなくて済むようにしようという点です。この二つに着目することで、手取りは増やすことができるのです。
経営をしていたら収入を増やすことに目が行きがちです。しかし、収入には税金という化け物が付いてきます。大切なのは手取りです。
では、機会損失をなくすためにはどのようなサービスを行えばいいか。
一言で言うならば、「入居者が喜ぶ特典を用意しよう」ということです。
例えば、入居者のみが利用できるクーポン券を発行するのはどうでしょう?入居者のみがお安く購入できるショップを作るのは?マンションのリフォーム費用をクラウンドファンディングで集めてみるのは?
もう、賃貸業者に任せっぱなしの時代ではありません。とびきりの営業マンがいてくれたらいいですが、どんな人はそんなにたくさんはいません。オーナーさん自身が経営を楽しみ、溢れてきたアイディアをどんどん試してみると良いと思います。facebookやLINE、インスタだってどんどん活用すればいいのです。
消費税増税が言われて、駆け込み建築を計画している人はいませんか?息子のため、娘のためと思って立てたマンション。実はそれを相続する2代目にとっては大きな悲劇を生む物件になってしまうかもしれないのです。
現実に築40年を超える文化アパートを相続した子供達の世代は、古くなった物件の修繕費がかさみ、入居者が減り、困っている方々が少なくありません。
ただ土地や建物を持っているだけなら負担は固定資産税だけ。しかし、入居者がいて、収入を得ていたらそこに所得税などが上乗せされていきます。それを忘れてはいけません。
増税に合わせて、様々な提案がオーナー様の元には届くかもしれませんが、安易に決断するのではなく、しっかりと20年、30年先の未来を見据えた事業計画ができているかどうかをしっかりと見極めた上で決断することが大切なのです。
消費税の増税に踊らされることなく、何のために建築するのか、しっかりと考えていきましょう!!
まとめ
消費税が上がることで家賃が上がる可能性は少ない
オリンピックの後はもっと怖い…と言うダブルパンチは多分間違いないでしょう。
国にも心配なことがたくさん起きるでしょう。広い目でそういったことを見据えて、未来へ向かう計画をしっかりと立てていきましょう。
また、消費税8%の時代に建てたマンション、建築から年月が経ち返済額が少なくなっているマンションに関しては思い切って家賃を下げるのもアイディアの一つ。
リフォームなどに関しても、これまでとは違う様々なアイディアを取り入れていくことで自分の物件の価値を作っていくことはできます。
柔らかな頭で、来るべき未来に立ち向かっていきましょう!