不動産を持つと気になるのが税金でしょう。不動産にまつわる税金は多く、かつ細かく区分されています。
それにより期限の定められた必要な手続きなどが発生し、頭を悩ませる方は多いのではないのでしょうか。
不動産の税金の基本を押さえ、特に気になる項目について詳しく調べてみました。
不動産にかかわる税金について
不動産の取得、保有と譲渡にかかる税金を挙げてみました。
<不動産を購入した時>
<不動産を保有している時>
<不動産を売却した時>
不動産所得にかかる税金
不動産所得というのは、不動産を持ち、賃貸マンションとして家賃として得た収入のことです。
もちろん税制上不動産所得として定義される項目は他にもあります。土地や建物など不動産の貸付けのほか、地上権などの不動産の権利や船舶や航空機などの貸付けです。
不動産所得の金額の算出式
不動産所得を算出したら、それにかかる税額は、自身の所得税率を掛けることで算出できます。
※税率は所得によって変わります。
不動産賃貸業と消費税
不動産はそのひとつがとても高額なため、掛かる消費税も当然高額になります。
それにより利回りが変わったり、手元に残る資金としても変わったりするとなると、着目せずにはいられないでしょう。
多くの方は還付金に大きな期待を寄せているかもしれません。
しかし、近年さまざまな税制改正があり、以前のように簡単に還付を受けられなくなっているのが現状です。
節税を試みる方々と制度の追いかけっこのような気もします。まずは不動産賃貸事業における消費税の基本的な知識を確認してみましょう。
不動産取引の種類
消費税が課税されるものとされないものがあります。
・課税取引(課税売上)→消費税の課税対象となるもの。(駐車場やテナントに係る収入など)
・非課税取引(非課税売上)→消費税の課税対象にならないもの。(家賃収入など)
納税義務の区別
・課税事業者→前々年の年間合計額が1000万超の場合
前年または事業年度の上半期6か月間の課税売上高が1000万超の場合
・免税事業者→前々年の年間合計額が1000万以下の場合 ※手続き不要
納める消費税の計算
・本則課税→課税売上げ-課税仕入れ
・簡易課税→預かった消費税-(預かった消費税×40%※)
※40%はみなし仕入れ率といわれ、事業ごとに法律で決まっている。
どちらを選ぶかは比較検討することが重要です。不動産賃貸業の場合は、新たに建物を取得しない、大修繕をしない場合、「簡易課税」が有利です。
簡易課税を適用する条件
①前々年の課税売上高が5000万円以下である
②「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用する課税期間開始日の前日までに所轄税務署長に提出する
この2つを満たせば選択することができますが、2期(2年間)は強制適用となります。また、事前に選択する必要があることから、さまざまな事態を想定した上での予測が求められます。
消費税の還付を受けるためには?
消費税は支払いの方が多いと一定の手続きにより還付される仕組みになっています。しかし、次のような条件があります。
①課税売上げより課税仕入れが多い場合(絶対ではありません。)
引ききれなかった消費税の還付を受けることができるが、本則課税の適用事業者に限られます。
※免税事業者や簡易課税適用者は対象外。
②課税事業者であること
免税事業者は、「課税事業者選択届書」を課税期間の開始日の前日までに所轄税務署長に提出することで還付を受けることができます。※3年間は免税事業者に戻られません。
③簡易課税制度を選択していないこと
簡易課税制度適用事業者が、消費税の還付を受けようとする場合、「簡易課税制度選択不適用届出書」を課税期間の開始日の前日までに所轄税務署長に提出することで還付を受けることができます。
※3年間は簡易課税の選択ができません。
注意したい点として、消費税の還付を受けた後に、課税売上割合が50%以上変動した場合、還付税額を返還しなければいけないということです。消費税法では、仕入れにかかる消費税額は仕入れ時の課税期間に控除されますが、固定資産のように課税仕入れにかかる消費税の調整計算をします。また、2016年4月1日以降、高額特定資産を取得したときは、3年の課税期間中は事業者免税店制度及び簡易課税制度は適用されないことになりました。
収益物件を購入した場合の還付はどうなりますか?
消費税の還付は、課税事業者であることを前提として、預かった消費税よりも支払った消費税の方が多ければ可能です。
しかし、先述したように近年さまざまな税制改正により、還付を受けられる条件が厳しくなっています。
①消費税の課税事業者であること※参照:消費税の還付を受けるためには?②課税事業者であること
②建物の引き渡しがある月に「課税売上割合」を100%に近づけること
課税売上割合とは、課税売上と非課税売上の合計に対する課税売上の割合のことなので、新しく不動産を購入した場合は課税売上を計上し、100%に近づけることが大切です。
課税売上を出すために、以前は自動販売機を設置したり、家賃をもらわなかったり、新たに不動産を購入したり、と対策が取られました。
しかし、2016年4月の消費税法改正により、不動産の消費税還付が一部制限され、「2016年4月1日以降に物件を購入した事業者が対象で、購入から3年間、免税事業者になれない。」となり、3年間の「課税売上割合」で3年目に再計算することになりました。
このように、幾度かの税制改正により、消費税還付は非常に厳しくなりました。
秘策?
それでも何とか消費税還付を受けたいと考えるなら、金の売買を何回も繰り返す方法があります。
たとえば、1000万円の金の売買を10回繰り返すことで非課税割合を上げるという方法です。一見、違法と感じますが法の仕組みとしては合法です。
不動産売却損の場合、還付はありますか?
不動産売却時に損益が発生した場合は所得税と住民税が課税されません。売却によって生じた所得を譲渡所得といい、これには所得税と住民税が課税されますが、売却損が出た場合は課税されません。
<譲渡所得・税額の計算>
売却損が出た場合、一定の条件を満たせばいくつかの控除が受けられます。
①居住用財産の買い換えなどの譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除
②特定居住用財産の譲渡損失の損益通算王帯繰り越し控除
還付を受けるというよりかは、課税されない、控除が受けられると考えると良いでしょう。
まとめ
消費税を支払う義務を持っていることが、還付を受けるための必要最低条件となります。
以前は消費税の還付金を受けることが節税効果に繋がることから、免税事業者があえて課税事業者になるという方法が取られていました。
しかし、こういった手段を国税庁が問題視し、規制が厳しくなり、消費税還付を受けられにくくなっているのが現状です。
出来ないことはありませんが、規制をくぐり抜けてまで得るメリットがあるかどうかをよく考える必要がありそうです。
こういった難しい案件は規制改正の知識を更新できていて、なおかつ、経験豊かな税理士に相談することが一番の得策です。