相続の相談をしようと思ったらどこに相談に行きますか?
税理士?弁護士や司法書士でしょうか?
それとも相続関連のセミナーでしょうか?
実は、相続の相談をするのにふさわしい場所はありません。
なぜなら相続の相談は多岐にわたるからです。
例えば、相続税に関する相談をするとなれば、税のことに詳しい税理士がいいですね。
しかし、相続に関して揉めてしまえば法律の出番となり、弁護士の力が必要かもしれません。
では揉めないために平等に分けたいとなれば、やはり税理士の得意分野となり、それを正しい書式で残そうとなれば司法書士の出番です。財産に不動産があれば、不動産鑑定士に鑑定をしてもらう必要もあるかもしれません。
このように、相続の問題は一筋縄でいくことが少なく、そのため実は相続の問題について検討し準備をするには時間の余裕が必要となるのです。
相続は他人事ではありません
ほんの少前まで、日本の死亡者数は100万人程度でした。
しかし、現在は130万人。あっという間に30万人も増えています。
団塊の世代と呼ばれる人口の多い世代の人達が高齢化していることを考えれば、今後はますます死亡者数が増えていく事は間違いありません。
亡くなる人が増えれば相続も増える。つまり相続は他人事ではないのです。
さらに、75歳前後からは要介護者数が、80代ごろからは認知症も増えます。昔に比べると、一人でも元気に外を歩いている高齢者も増えていますが、そのせいで実は交通事故による死亡も増えています。
皆が病気で亡くなるわけでなく、ある日突然!ということも想定しておかなくてはなりません。
つまり相続は、誰にでもある日突然おきる身近な出来事の一つなのです。
ほとんどの人に相続税がかかる時代です。
相続税額がアップ
ご存知の通り、平成27年に基礎控除が下がり、相続税がアップしました。
以前は3人の法定相続人がいたら
5000万+1000万×法定相続人の数
で、8000万円までは非課税でした。
しかし、現在は
3000万+600万×法定相続人の数
まで基礎控除がガクッと下がったのです。
つまり、今まで相続税がかかっていた人はもっとかかるように、今までかからなかった人もぐっとかかるように変わってしまったのです。
私が知っている実例によれば、アパートの経営者だけでなく、賃貸物件に住んでいるだけの人にも相続税がかかったことも。つまり特別な財産を保有していなくても、相続税がかかる時代なのです。
最近の相談で多いのは、サラリーマンの奥さんからの相談です。
ご主人が亡くなって3ヶ月頃に「うちの家は相続税がかかるのでしょうか?」と、非常に心配して相談にいらっしゃるわけです。
大きな財産があるわけではないので、たくさんの相続税がかかることになったら払うことができない。ほとんどの人がそうでしょう。
しかし、相談に来られる方の6割以上に相続税が発生するのが現実です。
眠っている資産
それはなぜかというと、自分が思っている以上に財産がある場合が多いからです。
財産は元気なうちは表に出てきません。
自宅を持っていてもローンがあります。生命保険に入っていても、生きているうちは解約して入ってくる解約返戻金分の価値しかありません。貯金だって子供の教育費としてあるだけです。
しかし、所有者が亡くなると違います。
なくなれば住宅ローンがなくなります。生命保険は保険金の金額となります。会社から普通の退職金よりも多い死亡退職金が入ってきます。両親から相続している場合もあり、それを諸々合わせていくと、基礎控除額を超えて立派に相続税がかかるのです。
そのため、今見えている財産だけを見て「うちは相続税はかかりそうにないわ」と油断していてはいけません。
相続は「友愛の情」ではなく、「権利を分け合うこと」だと理解しよう。
争族にならないために
相続を考える時、「うちの子どもたちは仲がいいから大丈夫」と思っている人はいませんか?
よその家の相続争いを見て、「まさかうちに起こるわけがない」そう考えているのなら、その考えは危険かもしれません。なぜなら、相続の現場では思い掛けないことが起こっているからです。
どうしても日本人は「友愛の情」の部分を大切にし、家族や兄弟が揉めるわけがないと思いがちですが、相続は情ではありません。権利を分け合うことなのです。
もしも、「友愛の情」の部分だけを優先し、権利がある子供に対して財産分与を行わなければ、それは子供達が揉める入り口になってしまいます。
せっかく築いた財産が、相続によってそれまで仲の良かった子供たちの関係を壊す害になってしまうかもしれません。仲良くしていた娘婿や息子の嫁などとの関係まで壊れてしまうことも充分に考えられるのです。
さらに、可愛い孫が相続に口を出してくることも最近では増えており、実際に祖父母を連れた孫が相続コンサルティングの元に足を運んでいることも。
孫自身には相続権はありませんが、おじいちゃんの財産はお父さん、お母さんに相続してもらわなければ自分が相続することができないと考えるからです。
この話を聞くと、そんな小さな子供が?と思うかもしれません。
しかし時代は高齢化しているのです。
考えてみてください。60代の夫婦が、80代の親の両親の遺産をまだ相続していないなんてことも非常に多いわけです。その場合、60代夫婦の子供が40代なんてことも充分に考えられます。
その場合、孫は立派に結婚しており、子供だっているでしょう。そうなれば、おじいちゃんの相続問題は孫にとっても他人事ではないのです。
家族の関係を壊さないためにも、事前の一策が大切です。
権利意識は高まっている
このように、昔に比べて日本人の権利意識の高まっています。
最近では「兄とは仲が良いので揉めたくはないのです。でも、僕にも権利はありますよね?」という相談から始まることも多く、喧嘩はしたくないけれど兄弟の情と権利は分けて考えていることが昔に比べると非常に多いのです。
親の目から見て「兄弟仲良し、家庭円満だから相続の問題はない」と思っていたとしても、実際に相続の問題が発生する時に、あなたはその現場にいることができません。
今現在、仲の良い兄弟、家族だからこそ、あなたの死後にその関係をこわさないように、正式な書面での準備をするなど、事前の一策が大切です。特に不動産をお持ちの方、会社を経営している方はなお必要です。
相続の前であれば、弁護士も司法書士もしっかり力を発揮して、あなたやあなたの家族を守ることができます。
しかし、実際に揉めてしまった後では、いかに優秀な弁護士や司法書士であってもどうすることもできません。もつれてしまった人間関係を解くのは、彼らの仕事ではありません。
「まだまだ先のことだから」
「自分の内には関係がないから」
と油断することなく、しっかりと下準備を進めることをお勧めいたします。
生前贈与を上手に使おう
最近では、財産の中の現預金の割合が増えてきています。
昔は財産というと、不動産の割合が非常に高く、一時は80%くらいを不動産が占めていた時代もありました。しかし、現代では金融資産の割合が増えてきています。不動産と違い、維持するための手間や費用もかからず、現金を欲しがらない人はいないでしょう。
ところが相続税となると話は別です。
なぜなら、金融資産は圧縮することが難しいからです。不動産なら1億で買った不動産が、貸家建付であればぐっと圧縮することができます。その結果、相続税の対象としての価値は6000万くらいになります。
しかし、現金の場合は1億は1億です。
相続税対策をするのであれば、この部分を下げる努力をしていかないとなりません。
では一番良い方法はというと、生前贈与です。
通常、相続税の節約をしようと思ったら、お金を使うこと。うちの外に出すしかありません。
しかし、生前贈与であれば、おじいちゃんのお金を孫に渡すなど、家の中で回すことができ、110万まで非課税になりますので、五人に渡せば550万非課税にできます。
これを毎年繰り返すことで、お金は外に出て行きません。
つまり、この制度をうまく使えば、相続する方もされる方も非常にメリットの高い方法になります。
ただ、一つ注意しなければいけないのは、税務署が生前贈与として認めてくれるかどうか。
もしも税務署に認めてもらえなければ、何の意味もありません。
だからこそ、正しい生前贈与の方法を知らなくてはいけません。
少しだけ税金を払えばよいんだ!
生命保険の非課税枠を有効に使おう
生命保険は一部を終身保障にして、それ以外が60歳ごろを境目にガクッと下がる契約をしている人が多いかと思います。自分の保険証所を是非見直してみましょう。
もしそうであれば、亡くなる年齢によっては保険金はあまり役に立ちません。
しかし、保険には大きなメリットがあります。
保険金は500万×法定相続人の数が非課税になるのです。
例えば法定相続人が四人いる場合、2000万円の現金の場合は相続税がかかりますが、保険に変えてしまえば相続税がかからないのです。
「それはすごいけど、この年齢からでは加入できる保険はないのでは?」と思う人も少なくないでしょうが、今は健康診断のない保険も増えています。一時払いのない商品も沢山あります。
また、外貨建ての保険でもリスク管理がしっかりしているものも多くあります。
思っている以上に保険の種類は豊富にあります。
是非、保険の担当者に詳しく話を聞くなどして、しっかり検討してみると良いでしょう。
相続は不動産であっても分割を基本に
実際に相続する場合、現金は分けられるが、不動産は分割することが難しいものです。
そのため、どんなに大きなお屋敷であったとしても、相続がスムーズにいかず、そのまま空き家になっていることも少なくありません。
しかし、空き家になっていれば放火の危険も高く、せっかくの財産が燃えてしまうことも。田畑もそうで、手入れし作物を作る人がいなければ、あっという間に草だらけになってしまいます。
ごく稀に「分割するのが難しいなら共有しよう!」と仲良い兄弟などが言い始めることもあるのですが、実際に共有するとなると、メンテナンスの問題、税金の問題などを原因に揉め始め、せっかく仲良しだった兄弟が最後は大げんかになってしまうことも。
そういった事態を避けるためにも、相続は共有を避け、分割することを基本に考えることを勧めします。
最近では親子が離れて住んでいるケースも目立つので、不動産の場合は管理する手間や費用も考えて、なるべく近くに住んでいる人にうまく分配できれば、それが円満かもしれません。
さらに、遠くに住まう相続人には同等の価値の現金を渡せば、揉めることも少なくないでしょう。現金が手元にないようであれば、先程お話ししたように、保険金を上手に使っていくと良いでしょう。
貯金は相続財産です。2000万円あっても3人兄弟がいれば、3人で分けなくてはいけません。
しかし、生命保険は相続保険ではなく、受取人固有の財産ですので、分割する必要は無くなります。このことをしっかりと考えて、受取人を設定しましょう。
分けることが基本よ!
保険の受取人はよく考えて設定を
多くの人が自分の配偶者を保険の受取人にしているのではないかと思います。
しかし、それは本当に正しいのでしょうか?
例えば夫が1億円の保険をかけているとします。受取人は配偶者である妻です。保険は受取人固有の財産ですから、妻には1億円が入ってきます。
しかし、不動産や会社など、実際に相続するのは子供という場合が少なくなりません。何人か兄弟がいたら、跡取りとなる長男などがその多くを相続することも多いでしょう。
そうなれば、相続税を払うのは子供たちです。
保険金として現金は一円も入ってこないのに、多額の相続税が子供達にのしかかってくるのです。中でも多くを相続した長男は大変な負担を強いられることになるかもしれません。
また、妻が受取人の場合、妻が認知症になってしまった場合はどうでしょうか?
受け取りのサインや捺印ができなければ、保険金をすぐに受け取ることができません。サインや捺印ができなければ、ものすごく面倒な手続きをすることになります。
また実際に保険金を受け取ったとしても、節税のための贈与の手続きなどを行うことができません。その場合、大金を持ったまま亡くなることになります。その場合は、残された財産をめぐって諍いが起こってしまう場合も少なくないでしょう。
そう考えると、おのずと保険金の受け取りを誰に設定しておくべきから見えてくるのではないでしょうか?
まとめ
今後は、人口が減少する事は間違いありません。日本の各地で人口は少なくなり、高齢化が進み、少子化が進み…と考えれば、自分の財産を誰に残したいのかをしっかりと考え、そのための準備をすることが大切になってきます。
自分が築いてきた大切な財産を次世代にしっかりと引き継ぎ、家族や兄弟の関係を良好に保つためにも、相続に関する準備をしっかり整え、自分の財産を不良債権にしないことが大切です。